年に13回も農薬を散布して、ようやく実をつけるリンゴ。
農薬を使わない方法なんて、気が狂ったとしか思われなかったのに、
木村さんはあえて「バカになり」、無農薬無肥料に挑みました。
9年の歳月を経て実をつけたリンゴは、生命そのものの味がするらしい。
そして腐らない、まさに、「樹の実」だったそうです。
「あいつ、とうとうやりやがった。」
無農薬無肥料をしてから、どんどん葉を落とし、枯れていくリンゴの木、
その様子を見て軽蔑もしただろうし、哀れにさえ思ったであろう隣の畑の持ち主。
その人が、一面に咲くリンゴの花を見てそう言ったそうです。
大切なのは、目に見えている葉っぱや枝ではなく、地面の下の根っこだったんです。
雑草や虫たちは自然の中のつながりのひとつで、人間やリンゴもそう。
「無数の命がつながり合い、絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。だから百の仕事に通じなければならない。」
今まで私は何をしてきたんでしょう。
恥ずかしくてどこかに逃げ込みたいくらいです。
信念を貫くことがいかに難しく、恐ろしいくらいの困難さを伴っていることか。
でもそれによって生まれたものは、「本物」なんですね。
自分でしっかりした根っこを張って、自分でちゃんと立っていられる人間。
人間が自然の一部である以上、そういう存在であるべきだし、
子供に何かを教える仕事をしているなら、子供たちがそうなれるように手助けしていかなければ。
本も、人と同じように、「出会い」がありますよね。
この本を薦めてくれたキョロちゃん、ありがとう。